第12回:築浅物件は旧公庫の基準金利適用住宅かどうかを確認する
▼1996年度から実施された基準金利適用住宅制度
旧住宅金融公庫では、1996年度から「基準金利適用住宅制度」が導入されました。これは、一定の条件を満たす物件については金利の低い基準金利を適用し、それ以外の物件は金利が若干高くなるという制度です。金利というインセンティブによって、少しでも質の高い住宅を促進していこうという考え方です。
当初の基準金利適用住宅の条件は図表1にある通りです。マンション(共同住宅)では、戸境床のコンクリートの厚さ=スラブ厚15cm以上が条件で、それにバリアフリータイプか耐久性タイプ、もしくは省エネルギータイプの3つのタイプのうち、ひとつ以上を満たす必要がありました。
図表1 基準金利適用住宅の技術基準(1996年度) |
共通基準
戸建て住宅
- 基礎は鉄筋コンクリート造で、高さは地面から30cm以上
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共同住宅
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分譲住宅などの付加基準
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+ |
選択基準
バリアフリータイプ
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耐久性タイプ
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省エネルギータイプ
- 外壁、屋根、床などへの断熱材施工、寒冷地における開口部二重化など
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▼1998年度からは基準がさらに強化される
これが、1998年度にはさらに強化されて、耐久性の向上が共通基準となり、それに加えて、バリアフリータイプか省エネルギータイプのどちらかの条件を満たすことが条件に変更されたのです。耐久性の向上の内容は図表2にある通りで、鉄筋コンクリート造の場合、鉄筋を覆うコンクリートの厚さ、いわゆるかぶり厚の強化が挙げられています。たとえば、土に接しない柱・はりや耐力壁については、屋内が4cm以上、屋外が5cm以上などと定められています。建築基準法より1cm厚い基準であり、耐久性への信頼感が格段に向上するのは間違いありません。
図表2 基準金利適用住宅の技術基準(1998年度) |
共通基準
耐久性の向上
- 木造:すみ柱を12cm角以上
RC造:かぶり厚強化
S造:鉄骨の防錆措置強化
- 共同住宅の付加基準
床スラブ厚15cm以上
- 分譲住宅などの付加基準
基礎的バリアフリー実施
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+ |
選択基準
バリアフリータイプ
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省エネルギータイプ
- 外壁、屋根、床などへの断熱材施工、寒冷地における開口部二重化など
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この基準金利適用住宅の条件を満たせば、図表3にある通り、金利が0.1%程度低くなります。融資額1000万円当たりでみると、月々500円ほどの差ですが、35年にすると23万円以上の違いになります。融資額が2000万円ならその2倍です。
図表3 基準金利適用住宅とそれ以外との負担の差 |
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金利 |
1000万円当たり毎月返済額(35年返済) |
基準金利適用住宅 |
2.80% |
3万7377円 |
基準金利適用住宅以外 |
2.90% |
3万7929円 |
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▼基準金利適用住宅かどうか分譲時資料で確認
建物への信頼感と、金利負担の軽減の両面から、消費者が基準金利適用住宅を優先して選択するようになるのは当然のことで、この制度実施から数年内には、ほとんどのマンションで基準金利が利用できるようになりました。基準金利適用住宅でないと販売面で大きなハンデを背負うことになりますから、分譲会社としても基準金利適用住宅にせざるを得なくなったのです。
ただ、制度がスタートした当初はそうでもありませんでした。ですから、築浅物件の選択に当たっては、分譲時に基準金利適用住宅だったかどうかを判断材料のひとつにすることが有効でしょう。パンフレットなどの分譲時の資料を見せてもらえばわかるはずです。
▼中古マンション「らくらくフラット35」に注目
でも、物件資料が残っていない場合には、どうすればいいのでしょうか。
住宅金融支援機構と民間提携のフラット35においては、1998年度以降の基準金利適用住宅については、「中古マンションらくらくフラット35」として、物件検査なしでフラット35を利用できる制度が実施されています。一般の中古マンションについては第三者機関による物件検査が不可欠で、通常3万円から4万円ほどの費用がかかりますが、その費用負担がなくなり、手続き面も何かとラクになります。
現在、その対象物件は全国で1万棟、戸数にして90万戸を超えています。具体的な物件について、住宅金融支援機構のホームページで、物件を検索することができます。築浅物件なら、売主が分譲時の資料を持っているケースが多いと思いますが、そうでない場合には、次のアドレスにアクセスしてみてください。
住宅金融支援機構「中古マンションらくらくフラット35」