多くの方が、内覧会は初めてだと思います。
また、内覧会だけでなく、新築マンションの室内を時間をかけて細かく見ること自体も初めてでしょう。(モデルルームでは細かい施工まで見ませんものね。)
ですから、何が一般的な施工なのか判断するのは難しいですし、知らないゆえに指摘してしまうものがあっても、仕方がないと思います。
私たちインスペクター(建物調査員)が内覧会に同行させていただいたとき、依頼者の方が指摘されたものに対して「これは通常の施工方法なんですよ」といったような解説を付け加えることがあります。
今回は、お部屋でよく見かける「傷や汚れに間違われてしまう正しい施工方法」をご紹介しましょう。
ひとつめは、壁に取り付けられている、これ。
透明の、ゴムのような素材のものです。
壁にちょこちょことつけられているのですが、たまに「変なものがくっついたままになってましたよ」とすべて剥がしてしまう方もいらっしゃるそうです。
これは「戸当たり(とあたり)」と言います。
この写真のように、「収納扉を開けると、扉が壁に直接当たる」場所に、緩衝材として取り付けられているものなのです。
ですから、壁に透明の「戸当たり」がつけられていたら、すぐ近くの収納扉を開けてみましょう。扉が壁に直接当たらず、戸当たりに当たれば適正な取り付け状態です。
家の中にある 収納(クローゼット、トイレ吊戸棚、洗面台下、物入れ等)の扉は、生活しているときと同様に開け閉めしてみると戸当たりの取り付け忘れが無いかをチェックできます。
たまに、戸当たりが付けられているのに位置が適切ではなく、収納扉を開けると戸当たりには当たらず、壁に直接ぶつかっているときもありますので、そのときは適正な取り付けを施工会社にご依頼ください。
さて、ふたつめの「傷や汚れに間違われてしまう正しい施工方法」はこちら。
リビングや洋室、廊下の壁に貼られている「巾木(はばき)」です。
写真の矢印の部分に白っぽく穴が開いています。
これは、巾木を壁に固定するための「隠し釘(かくしくぎ)」の跡なのです。
職人さんが留めていくので、多少のばらつきはありますが、概ね等間隔で穴が開いていると思います。
たまに聞くのが「巾木に穴が開いて傷が付いているから、すべて補修してほしい」というリクエスト。
確かにご存知なければ傷だと思ってしまいますよね。
しかも、内覧会のときは床に四つん這いのような体制で床などの仕上げをチェックする方も多いので、これにとても目がいってしまうようです。
ただ、「隠し釘」と言うくらいで、立った状態では見えないような位置に留められており、固定するためのものだとわかってさえいれば気にはならないと思いますので、こういったものは、そのままにしておくものだとお考えください。
同じような釘の指摘としては、こういうものもあります。
押入れの中段です。
先端のほうに、やはり穴が開いています。
こちらも「穴が開いているので、補修してください」と、すべての釘跡の補修をご依頼される方がいらっしゃるようですが、基本的には押し入れの中段はこれが最終の仕上げです。
もちろん、穴が大きく開いていたり、間違って釘を打った跡がそのまま残っていたり、というものは補修してもらってくださいね。
こんなふうに、施工上必要なものであっても、購入者の方々にとって初めて目にするものだと、それが一般的なものなのかどうかわからないのは皆さん同じでしょう。
ですので、気になるものがあったらまずは「これは通常このままの仕上げで終わらせるものなのですか?」と施工会社に確認してみましょう。
辻 優子(つじ ゆうこ)
大手マンションデベロッパーにて、新築マンションの販売、現場施工管理から各種購入者向けセミナー運営など幅広く携わった後、 (株)さくら事務所参画。働く主婦目線でのきめ細やかなアドバイスにも定評がある、女性コンサルタント。
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