1.長期修繕計画とは
新築時はピカピカ輝いて見えたマンションも、年月を経るごとに汚れや傷みが目につくようになるもの。これら経年による劣化は致し方ないことですが、こうした劣化はなるべく早い時期に見つけて補修する……当然のことですね。これは通常のメンテナンスですが、マンションの維持・管理では通常のメンテナンスとは別に、あらかじめ建物各部の劣化などを予測して10年、20年、30年と長期にわたる修繕計画を立てておくことが重要です。
マンション全体を修繕するのですから、工事のために足場を組み、期間も数か月に及ぶなど大事業となります。当然、費用も多額なものとなりますので、予算もしっかり計画しておかなければなりません。このような大規模修繕工事が必要な時期、修繕が必要な項目、必要とする費用の分担などをあらかじめ決めておくのが長期修繕計画です。この長期修繕計画は、中古マンションを買う時にも重要なポイントの一つです。
〈大規模修繕工事中のマンション〉
2.中古マンション購入時にチェックしておきたいポイント
長期修繕計画はマンションの資産価値の維持・向上に必要不可欠といえますが、中古マンションを選ぶ際にどのような点に留意すればいいか、チェックポイントを整理してみましょう。
長期修繕計画そのものが作成されているか?
マンションにおける長期修繕計画は、平成5年に(株)リクルートコスモス(現(株)コスモスイニシア)と(株)コスモスライフ(現大和ライフネクスト(株))が業界に先駆けて新築のマンションに導入したものであり、その後各社が追随して現在では新築時に長期修繕計画を作成しておくことが標準的になっています。しかしそれ以前は分譲時に長期修繕計画を作成しているマンションはほとんどありませんでした。したがって築年数の古いマンションでは特に長期修繕計画そのものが作成されているか否かを確認する必要があります。
計画期間は25年以上か?
国土交通省が定める長期修繕計画のガイドラインでは、その計画期間として25年間の計画が望ましいとされています。設備の種類や建物の部位によっては新築から25年目以降にはじめての改修や交換が必要となるものもありますので、さらに30年、35年と長期に及ぶ計画が立てられているのが好ましいといえます。
定期的な計画の見直しがされているか?
長期修繕計画は一度定めたら終わりではなく、定期的な見直しが必要です。建物の劣化等は当初の予想通りに進むとは限りません。そこで、定期的に建物の劣化状況を調査して、実情に合った修繕時期に計画を変更する必要があります。国土交通省のガイドラインでは5年程度ごとに見直すとしていますが、大和ライフネクストでは1年ごとに日常管理や日常修繕の情況を踏まえて計画の見直しを行っています。
計画通りに工事が実施されているか?
長期修繕計画は手段であって目的ではありません。重要なのは計画通りに確実に工事が実施されているかどうかです。計画がされていても管理組合の総意が得られない為、予定の時期に工事が実施できず、建物の劣化がどんどん進んで行くといった例も少なくありません。また、実施された修繕工事の履歴がきちんと保管されている事もとても重要です。改修工事の履歴はそのマンションの健康診断書のようなもので、当然、次の大規模修繕工事のための長期修繕計画の貴重な参考資料にもなります。
修繕積立金の金額は工事費用を賄える予定か?
いかに立派な長期修繕計画を立てていても、それを実施するお金がなければ本末転倒です。長期修繕計画では必要な工事内容から、必要となる費用が概算できるので、現状の積立金残高に今後の積立金を加えた額でいつまでの修繕工事が賄えるかを予測することができます。
もしも将来的に金額が不足するようなら、管理組合の総会決議を経て、修繕積立金を増額せざるを得ないということにもなります。毎月の負担が増える修繕積立金の増額などいやだと、誰しも思うことでしょう。そのため実際の工事を実施する際に一時金として区分所有者から徴収するという方法もありますが、多額の一時金を負担できない区分所有者も出る可能性があり、計画通りの工事が実施できないという事態にもなりかねません。そうなると、マンションの資産価値も落ちてしまうことになります。大切なのは、資金計画についてもしっかりとした計画が作成されているかどうかなのです。
〈修繕維持積立金シミュレーショングラフ〉
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