都心・安い・自分仕様
コーポラティブハウスの魅力
「耳の楽しみ…五感を潤すコーポラティブハウス」
(株)アーキネット代表 織山 和久
(1) 静かさ
アーキネットのコーポラティブハウスの中は、とても静かです。静かなのにはいくつか要因があります。
しっかりとした厚みのコンクリート壁が内外を分ける |
その第一は壁の厚みです。低層で計画するため、構造は頑丈な壁・床の面で支える壁構造が主体になります。鉄筋コンクリートの厚みは、住まい全体にほぼ一律で25〜30cmにもなります。したがって話し声や音楽、外部の騒音といった空気中を伝わる空気伝播音はまず聴こえず、音楽スタジオに準ずる静音性能にもなります。中高層マンションでは柱・梁といった骨組みで持たせるラーメン構造なので壁は薄く、遮音材をはめて苦情の出ないレベルに抑えているのが実情です。固体伝播音についても、厚みがあるとドシンといった重量衝撃音も気にならないレベルに抑えられます。
第ニは立地です。われわれのコーポラティブハウスはほとんど静かな住宅街に位置し、その表通りから一軒分は奥まった場所に計画されます。結果として、表通りの自動車や店舗などの騒音から間隔がとれるので、その分、音は小さく聴こえます(点音源では8m離れると18dBも減衰します)。表通りとの間には、建物や樹木もあるのでさらに音は小さく聴こえます。
中高層マンションは、用途地域指定によって幹線道路に面することになり、どうしても表通りの騒音・振動を受けやすくなります。特に低周波振動は耳では聴こえないのですが、不眠や頭痛、自律神経失調症などを招くことも懸念されます。
第三は安心感です。コーポラティブハウスの場合、入居者同士は住まいをつくるときから顔見知りです。出入りのときに顔を合わせれば気軽に挨拶し、子どものことは勿論、ペットの様子まで分かるような間柄のことが多い様です。したがって、開いた窓から赤ちゃんの泣き声が聴こえたり、ピアノのお稽古の音を耳にしても、「頑張っているね」と共感できる分、騒音ではなく声や音響として不快感には至らないことになります。同じ物音でも、見ず知らずの隣人からでは騒音と感じてしまうでしょう。
(2) よく眠れる
ご入居された方々がまずおっしゃるのが
「静かなのでぐっすり眠れる」
「こんなに目覚めがいいのは記憶にないぐらい」
といったご感想です。
質の良い眠りには、お住まいの方々が建築家と一緒に寝室としてのしつらえを工夫されたことも大きく作用しています。落ち着いたライティングとインテリア、穏やかな色彩のファブリック、ゆったりとしたベッド、朝日の入る高窓など、細部まで配慮が行き届いています。
和式の寝室 |
右の参考写真のように、畳敷きで日中は開放しながら、寝るときは障子で仕切って布団を敷く和式の寝室も優れたプランでしょう。
いろいろなタイプの寝室をつくるにしてもその共通の土台として、壁・床の厚みが作用して外からの音がまず聴こえない、気にならない、という静穏な睡眠環境があり、これが功を奏しています。特に幹線道路沿いのマンションから引っ越された方は、低周波振動から解放されて睡眠の心地よさをひときわ実感されています。排気ガスやばい煙にも悩まされないので、ついでに「鼻毛も伸びなくなった」そうです。
(3) よく聴こえる
奥まった場所なので、交通騒音もあまり聞こえません。そして厚い壁・床が住戸間の物音も遮るため、背景音がほとんどしないので微かな音を楽しむことができます。
少し窓を開けて、耳を澄ましてみたとしましょう。そよ風に木々の葉がこすれあう音、コオロギやカンタンなどの秋の虫の声、雪の日のしんしんとした様子、下校時のご機嫌な子どもの声などが聴こえてきます。深まる季節や楽しそうな毎日をとても身近に感じ取ることができます。
連続した室内空間であれば、暮らしの音が聴こえます。「ただいま」「おかえり」、台所から聴こえるトントンというまな板の音、コトコトという煮込む音、アイロンのスチーム音、咳払い、子どもの寝息…。
他の物音に妨げられないので、離れていても家族の気配をしっかりと感じ、いろいろ思いやることができます。
(4) 音楽を楽しむ
防音仕様を施したピアノ室 |
自宅スタジオ |
もともとの遮音性能が高いので、防音仕様を加えて、本格的なオーディオルームや練習スタジオ、ピアノ室などにされる方も少なくありません。一般的なマンションでは遮音性能も満足できず、そもそも仕様変更もできないので、ご希望される方には好評です。
写真右上は、遮音性のよい地階をピアノ室に当てた例です。その上に音漏れのしないように浮き壁・二重ドア、ドライエリアの明かりをとるが音を逃がさないガラスブロック、といった工夫を施し、心置きなくレッスンに臨める場所になりました。
次の写真右下は、2-3階メゾネットの2階部分を、ギターを弾くためのスタジオにした例です。厚いコンクリートに囲まれた空間を、遮音性の高いペアガラスの窓・ドアで仕切っています。密室に一人閉じこもるのではなく、家族の出入りや外の様子にも気がつくようなつくりが特長です。
耳にいい住まいは、今、思われている以上に大切です。心地よく眠る、自然や暮らしの微かな音に気づく、好きな音楽に心置きなく浸る、というのは、日々の暮らしの中で心を豊かにすることでしょう。
筆者プロフィール
株式会社アーキネット代表。土地・住宅制度の政策立案、不動産の開発・企画等を手掛け、創業時からインターネット利用のコーポラティブハウスの企画・運営に取組む。著書に「建設・不動産ビジネスのマーケティング戦略」(ダイヤモンド社)他。