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マンションの注文建築「コーポラティブハウス」vol.5 


都心・安い・自分仕様
コーポラティブハウスの魅力

「オプションよりカスタマイズ。自分仕様が簡単に出来るワケ」

(株)アーキネット代表 織山 和久

(ア)居心地良くすることを、『こだわり』と呼ぶな

 「コーポラティブハウスは『こだわり』のある人が選ぶものだから、私には向かないのでは」と、時どき敬遠されることがあります。それには「自分にとっての居心地の良さを素直に形にする、という当たり前のことです」と答えています。
 もともと『こだわり』は、仏教用語にすると『執着』ですから、良くない言葉です。仏教では、やむにやまれぬ生への執着を制して心安らかに過ごす、というのが根本の教えになります。この教えを踏まえれば、居心地のいい暮らしは、住まいの存在すら忘れる、といった感覚でしょうか。
 うがった見方かもしれませんが、居心地良く暮らそう、という素直な気持ちを、『こだわり』と否定的に表現するのには、自由を認めず画一化しようという標準化の発想が見え隠れします。「公団に始まった○LDKが標準プラン、いちいち個別に対応するのは非効率的なので困る、下々がどうでもいいことにこだわるな」という発想でしょうか。供給側としては気に入らないものの、『こだわり』に多少譲歩したのが、標準プランにオプションを付ける、という方式です。これは発想が逆です。
 住まいを「暮らす人々にとって居心地良く」という発想から出発すれば、インテリアを個別設計するのは当たり前です。キッチンにしても、身長150cmの人と180cmの人ではちょうどいい高さは違ってきます。床の踏み心地も、裸足の人は厚みのある無垢材やコルク材が気持ち良く、上履きの人は石貼りも選択肢に入ります。色調でも、暖色系が落ち着く人も、寒色やモノトーンが自然に感じる人もいます。こうしたインテリアのひとつひとつを、暮らす本人にとって具合よく誂えていけば、日々の暮らしの中で違和感を覚えることもなく心安らかに過ごせるというものです。

(イ) まず居心地のいい場所を決める

 居心地の良い住まいをつくる過程は設計の奥義のようで、また依頼主のプライバシーにも関わるのであまり公開されません。そんな中で貴重なテキストとして「建築論集 二十二世紀を設計する」(彰国社)に、建築家の林昌二氏が自宅を改築されたときの過程がストレートに語られています。「家は大まかな囲いでよい」とおっしゃってから、改築、つまりインフィルの発想プロセスを明らかにされています。簡単にご紹介すると

  1. まず居心地のいい場所を決める:設計は、私の座を決めることから始めました。台所の東、斜めの窓に面したカウチがそれです。
  2. その場所に役割を与える:そこにまず、椅子ではなくカウチ、そこには朝日がさし込み、食事ができる。ごろりと横になると足元に暖炉のぬくもりがあり、そこから庭が眺められ、庭越しにわが家の別の部分が見える。さらに、台所、寝室、居間の様子が分かって、その座は入り口からは見えないが、少し体をうごかせば入り口の来客の様子が分かる、そんな場所でした。カウチの前の丸テーブルはその中心で、食事のほか、ありとあらゆる役割をこなします。
  3. その場所から広がりを考える:[カウチの背中側の]西壁沿いの長い台は、文字通り台所なのですが、台は右に移るに従って…作業台やら花台やらに変わり、右の端部では手紙を書いたり請求書を綴じたりする机に変わります。夕食は、常時はふたりであり、時としては五〜六人…丸テーブルとは別にセットされた矩型の食卓を使い…。台所は、伸縮自在の場所なのです。
  4. 他の機能空間とつなげる:[台右端の向こうにある]寝室は…二五年も使ってきた場所は変えないことにしました。寝室の北側には洗面、その左右に浴室と便所、…、開け放して使える設計であること、洗面所の天窓を通して、寝室から朝の天気が分かるという仕掛けです。便所を抜けると来客用の洗面所、そして居間に通じます。これは来客が居間側から使う便宜のためと、南北にふたつの通路を確保して、一階をひと回りできる平面にするための工夫でもあります。ひと回りできることは、同じ面積でもはるかに便利に使え、広がりの感じられる空間にもなることです。

 このように「キーポイントの[カウチの座]に注目すると、この家の構成はたちまち説明しつくされてしまいます」という簡素でかつ深いプランです。つまり住まいの設計の原点は、『自分にとって一番居心地のいい場所を決める』ところにありました。ちょうど猫が、いつの間にか気持ち良さそうな陽だまりを見つけ出して、のんびり横になって寛ぐのと通じます。
 どうも間取りというと、平面図をにらみながら、調理や就寝など機能別ないし属人的に区画すること、そして場所取りすること、と誤解されがちです。でも、そうして出来上がった住まいは、たとえ家事が効率的に消化されるにしても、居心地が良いわけではありません。居心地の良い場所がなければ、居場所がなくてうろうろと落ち着かなくなります。もともと間取りとは、居心地のいい「間」を取る作業だったと思います。自分の心地よいカウチから住まい全体を発想する、というのは何の衒いもなく素直です。天才バカボンのパパのように「これでいいのだ」と力強く思われます。自分にとって居心地のいい状態とすると、カウチで寛ぐ以外にも、家族で延々とおしゃべりする、テレビを視ながらぼーっとごろ寝する、夕日を見ながら風呂に入る、庭弄りに没頭する、などを素直に思い浮かべることができます。住まいづくりは、ここから始めましょう。

(ウ)建築家と対話しながら形にする

 自分にとって居心地のいい場所を頭に浮かべれば、あとは建築家と対話していくことで形になっていきます。「自由設計だと、自分でたくさんインテリアや材料の勉強をしないと希望通りにならないのでは」という質問も寄せられますが、そうした専門知識は建築家に任せてもよく、住まう側としては「これからどんな暮らしをしたいか」を語れればいいでしょう。そうした対話の様子は、ちょうどお医者さんの問診になるでしょうか。

 建築家は、対話の中の言葉だけでなく、背景にある生活観や人間関係、生活様式などを的確に読み取っていきます。その上で住まう人にとって、居心地のよい空間構成を具体的なプランにまとめていきます。提案されたプランを見て、住まう人から率直なコメントが伝えられると、建築家は本当の要望をさらに深く解釈し直して、プランを改訂していきます。「建築家と知的な対話ができるのも楽しい」「これからの暮らしを本当に夫婦で話し合えてよかった」とも言われるプロセスです。そうした言葉と言葉、言葉とプランの対話を繰り返すうちに、「私が本当に言いたかったことが、まさに図面になっている」と満足のいくプランに結実します。そして実際に竣工してみると、「居心地が良い、想像をはるかに超える」ともよく伺ったりします。これがテーラーメイドの良さでしょう。

(エ)建築家と一緒なら予算も合理的に

 もちろん住まいづくりにもご予算はあります。設計報酬を支払うことに、抵抗感がある方もいらっしゃると思いますが、この予算面でも、建築家と一緒に住まいをつくるのは大いに利点があります。
 第一には、建築家の頭にある引き出しです。例えば「無垢材の脚の感触が気持ちいい」と希望しても予算に合わない場合があります。こんなときも建築家からは、「無垢材でも節があれば割安で、シンプルなインテリアにも調和するでしょう。木目を生かした天然塗料があるので、現場で色合わせしましょう」と提案されます。収納家具も大工仕事にして割安にしたり、キッチン台を壁の延長にしてコンクリートでつくったり、あるいは手際も良く単価も安い専門業者と交渉したり、と建築家としても納得のいくまで様々な代替案が工夫されていきます。また全体のデザインのバランスを考えていただけるので、金額として個々にはグレードを落とした気分になっても、出来上がってみるとまとまった印象になっているのも嬉しいところです。
 第二には、見積もり調整です。施工会社は、図面から数量を拾い、材料費や手間賃を踏まえた単価を掛け合わせて、数十ページもの見積書を提出します。もし自分が素人なら、これだけの見積書を受け取ってもみるポイントも分からず、何かふっかけられていないか、間違った金額になっていないか、とちょっと心配になるでしょう。そこを専門家である建築家は、この見積図書の数量に見落としや間違いがないか、単価が通常の相場に比較して適正な金額かどうかを、ひとつひとつの項目ごとに詳細に確認します。そして予算に合わなければ、前述のように建築家も施工会社もコストダウンのための提案を出し合い、ときには住まう方にも選択していただきながら、満足のいく工事金額に落ち着いていきます。
 第三には、長い目でみた工夫です。住まう方としては、「いま」の暮らし方、「いま」の家族構成、「いま」の収納、「いま」の好み、などどうしても「いま」を優先しがちです。そうなると仮に予算にゆとりがあって、思い通りに内装をほどこしたにしても、数年、数十年後にはしっくりいかなくなります。ここで建築家と話し合っていると、「長い目」で暮らしを考えるように仕向けてくれます。そして「長い目」で暮らしを見通して、間取りやインテリアもちょっと手を加えれば対応できるように、設計を詰めていくことになります。…子供の小さいうちに備え、柵にアクリル板を脱着できるようにしましょう。壁に棚柱を打ち込めば、将来、コレクションが増えたら棚板・棚受を足して対応できます。ここに引き戸をつけられるようにして、将来、子供部屋として独立もできます。などなど。こうした「長い目」があれば、先々まで含めたトータルの予算はぐっと抑えられます。
 せっかくの住まいづくり、建築家と対話しながら具体化する良さを、生かさない手はありません。

(オ)空間の素質が大事

 こうした自分にとって居心地の良い場所に仕立てていく前提として、やはり元々の空間が素のままでも豊かであることが上げられます。空間の素質のありなしがポイントです。

 巧みに連続し、一体感がありながら、個々に分けられる空間構成で、室内を動くと視野も変化して奥行きが楽しめる。ぼーっと寛ぐ場所、じっとひとりになれる場所、ぐっすり眠れる場所がうまくとれる。庇やスリット、中庭など彫りの深い建築は直射日光を散乱・制御しながら、朝・昼・夕と光の当たる場所や色合いの変化を映し、時の流れを感じる。外の風の流れを読んで、室内に満遍なく風が通って夏でも気持ちがいい。このように元々の空間自体が豊かなので、住む人それぞれに合わせて仕立てれば、その豊かさを引き出せるわけです。
 逆に元々が平板で貧しい空間だと、いくら内装に力を入れても、なかなか満足はいかないでしょう。部屋と部屋の関係が途切れがちだったり、眩しいか暗いかのどちらかで表情がうまく読み取れず、風通しもなくていつも閉め切ってエアコンのかけっぱなし、と悲しい結果になるのが目に見えています。将来、リフォームすればいいとお考えでも、このように空間に素質がないと、いくら手間隙かけてもなかなかうまくいかないことは、覚えておいていいでしょう。

(カ)コーポラティブハウスなら

 したがって、自分たちが居心地のいい住まいを求めるなら、次のようなポイントを大事にする相手を選ぶべきでしょう。

  1. 自分仕様にするのは当たり前のことと受け止める。こだわっていると否定的に切り捨てない
  2. 出発点として、「自分の居心地のいい場所」から素直に考えてもらえる。平米数や仕様などスペックだけを押し付けない
  3. 内装も建築家と対話しながら、具体化していくことができる。自由設計といいながら、単に要望を図面に落とすだけの設計で済ませていない
  4. 素のままでも豊かな空間が前提で、空間の連続性、光の回り込み、風通しの良さが大事にされている。単調で退屈な空間ではない

 私たちの取り組んでいるコーポラティブハウスは、当初から、それぞれの居心地の良さを目指しているものです。したがって、以上のポイントを大切にした方式であることは言うまでもありません。

筆者プロフィール
株式会社アーキネット代表。土地・住宅制度の政策立案、不動産の開発・企画等を手掛け、創業時からインターネット利用のコーポラティブハウスの企画・運営に取組む。著書に「建設・不動産ビジネスのマーケティング戦略」(ダイヤモンド社)他。

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